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2019年1月の整体


鼻呼吸で はく、驚異の効力



口呼吸の弊害は 多く、

これにたいして 鼻呼吸は、おどろくべき効力がある。





ところが すう時に 鼻呼吸がいいのは 大体誰でも知っているが

はく時をも 鼻で行うと 驚異の効力があるのかは、 あまり知られていない。

ただし ヨガでは 呼気も吸気も鼻で行うことが基本なので

ヨガをよくする人は すう、はく、ともに鼻呼吸でおこなう威力を熟知している、はずである。





そこで 今月は 鼻呼吸で はく、驚異の効力を説明してみよう。

まずは、

鼻呼吸と口呼吸の解剖学的な仕組みから説明してみる。


口呼吸の解剖学的まちがい


そもそも 哺乳類は、ほとんどが鼻で呼吸をするわけで、

口は 食物と水のため造形され 鼻が呼吸の役割をになうように進化してきた。

ところが ヒトが進化の過程で 直立歩行となり 言葉を使うようになってから、

気道と食道が複雑に交差する解剖的位置となり

呼吸するに際しては 口も 空気と息の通り道として機能できるようになったのである。

このため 口呼吸が鼻呼吸と併用されることになった。


それは まさに 口がそうしたこともできるなっただけで

口の本来の機能ではない。

こうして 哺乳類の中で1歳以上の人間だけが口でも呼吸ができるようになったわけ。


これは ある意味 直立歩行と会話発声の獲得の代償として

口呼吸ができるようになっってしまった!

と表現するのが もっとも適しているかもしれない。


このようにして 解剖的に気道と食道が複雑に交差する異になったヒトは、

反面 むせったり、誤嚥を生み、 さらに口呼吸の悪習慣をもたらす

構造的欠陥をもってしまうことになった ともいえる。


他の哺乳類では、

頭の後ろに首があり、口蓋垂のどちんこと喉頭の入り口の蓋がつながっていて、

気道と食道が 別々に立体交差になっている。下図の赤





ところが、ヒトでは直立の姿勢になることにより

口蓋垂と喉頭蓋が離れてしまい、気道と食道が平面交叉をしていて、

動物のように 立体交差でないため

食物を呑み込む時は喉頭を引き上げ気道をふさぎ、一時的に呼吸を停止させなければならなくなった。

これに失敗すると、気道に食べものが入り込み、激しくせきこむことになる。

さらに 老化のはて誤嚥性肺炎を生みやすくなり、 ついには 口呼吸という悪弊をもたらし

結局

咽頭における気道と食道のこの交差する地点は、

すなわち ヒトの大きな弱点として 魔の十字路 となったのである。



ヒトは 気道と食道が分かれず平面行差する




鼻を解剖してみる


鼻、つまり 鼻腔は、 次のようになっている。

鼻を理解するには 鼻腔・口腔・舌・咽頭・喉頭・食道・気管 の7つの部位を理解して

その位置関係を頭に入れる必要がある。

複雑なのは、すでに記したように

鼻腔から気管への流動曲線と口腔から食道の流動曲線が

咽頭と喉頭で平面交差するポイントである。

これが腑に落ちれば OK !





次に 鼻腔の詳細。 以下の図である。

鼻腔の特徴は、

3つの鼻道によって仕切られていること。

鼻腔上部に 嗅覚のセンサーが存在することである。





はく時も 鼻呼吸でする驚異の効力 

さて

こうして 鼻呼吸と口呼吸の違いを理解する前提として

鼻の解剖学的な初歩のエッセンスを理解すると

鼻呼吸でする驚異の効用がわかりやすい。


まずは、

はくことが 口呼吸と鼻呼吸とでいかに違うかを 実際にやってみよう。


まず 実際に 鼻呼吸で、

はくことを鼻だけで できるだけ長い時間をかけて はいてみよう。



次に

実際に 口呼吸で、

はくことを口だけで できるだけ長い時間をかけて はいてみよう。




できたら いずれも すくなくとも10秒〜15秒を続けてしてみる。


はく時 口呼吸と鼻呼吸の違いがどこにあるか?


まず 口呼吸の場合 はく息の量が圧倒的に多い感じがしないだろうか!

それにくらべ 鼻呼吸で はく時、

鼻から外気には出されるはく息の量が圧倒的に少ない感がしないだろうか!

まさにこの点が はく時の 鼻と口で行う大きな差異となり

これが何を意味するかというと、

つまり 鼻ではく時は、より努力をしないと息がたくさん吐けないのである。

では その努力とは 具体的に どこ? を どう? 努力するか? という事になる。

答えは、

呼吸筋群を より動かして息を出す努力をする!

という事になる。具体的には 以下の筋肉を指す。

横隔膜

内肋間筋

外肋間筋

腹直筋

腹横筋

内腹斜筋

外腹斜筋


胸鎖乳突筋

斜角筋群



もちろん 口呼吸で はく時も これらの筋肉群は動くのであるが

鼻呼吸の時の動き方の比ではなく、

鼻ではく場合は、これらの筋肉群にかかるテンションが圧倒的に高く大きい。

つまり筋肉負荷量が 口ではく時より格段に大きくなり

からだ全体呼吸とよぶのにふさわしい総動員呼吸というものになる 訳である。

このため 文字どうり

口先だけの動きから 全体性の高い呼吸になる。


次に

鼻呼吸と口呼吸の はく時のそれぞれの息の流動曲線を描くと以下の様になる。

まず はく時の鼻呼吸の息の流れをみると

喉頭 → 上咽頭 → 鼻甲介  → 鼻孔 → 体外

黄色のライン







これに対して はく時の口呼吸の息の流れをみると

喉頭 → 中咽頭 → 口腔 → 体外

水色のライン






この図で分かるように 鼻腔は鼻腔自体はかなり広いのであるが

鼻腔の中に 鼻甲介が3つあり これが壁となり 実際の息の流動は その間をぬって

鼻道を通り抜けていく。

このため 一気に息が外気に出る量が制限される。

これにたいして 口腔は 舌を低位の低い位置に置けば

広域な空間となり はく息は一気に多くなる。

このため 口呼吸で はく時 楽にはく事ができて

呼吸筋肉群を それほど作用しなくても済む。

口呼吸を行う時の下の位置を 低位舌 と呼ぶ。

低位舌とは、

ベロの先端が下の歯の裏側かそれよりも下の下の歯ぐきを触っている状態を指す。

鼻で はく時 正しい舌の位置は、

ベロ全体が上あごの天井にペタッと吸い付いた状態、

舌尖は切歯乳頭の後方で舌背全部が硬口蓋に隙間なく接触している状態となる。


これが 鼻呼吸と口呼吸の下の位置の大きな違いである。

つまり 口呼吸の場合は 舌が低位となり口腔が大きくなり

呼吸筋肉群の補助パワーが少なくても息の出入量が確保されるのである。

つまり 口先の行為となる。


よって 鼻呼吸 とくに 鼻ではく事を続けると ボディは より締まりを増すことになる。





次に 鼻で 時間をかけて ゆっくり はく時、

その息の流動感が鼻腔の上部にほのかにアタリ 

何とも言えない気持ちのよい感覚が襲ってこないだろうか?

さらに 鼻から はく呼吸を続けると

鼻腔上部から 頭蓋骨全体に 

えもいわれない不思議な陶酔感が漂ってこないだろうか?

 もっと すすめれば 鎮静感、陶酔感、開放感が どんどん深まり

ついには ある名指しをしたくなるような境地に達していく・・・

そんな状態を作り出してくれるのが 鼻で はく事の究極である。


こうした うっとりする状態が なぜ 鼻で はく時に起こるかというと

それは 嗅覚メカニズムと大いに関係している。


嗅覚とは 五感のなかで もっとも情動、あるいは 感情、 はたまた 本能 というような

瞬時の研ぎ澄まされた感性と 密接に結びついており

一瞬の匂いは 一瞬の快感不快に直結するのである。

嗅覚は他の感覚(視覚、聴覚、触覚、味覚)と 大いに異なり、

脳内での嗅覚伝達経路が 理知的な処理する部位を経ず

ダイレクトに本能行動や感情・情動に直結するため

その匂いが 間髪を入れずに情動を動かし 快感不快を決定する。


その嗅覚の最前線であるのが 鼻腔ないの上部にある、

嗅部 嗅球 嗅上皮 であり  

嗅上皮
にある嗅細胞が匂いを感知し 嗅球を通じて脳に情報が伝達される。



鼻呼吸で すう時、はく時、 いずれも 

嗅覚の最前線である 嗅上皮を刺激して 

すう時、外気の匂いをかぎ はく時は、気管からせりあがってきた自分の息の匂いをかぐ。

これが 鼻呼吸の快感の本質である。

匂いは 自分が気に入るものは 一気にリラックスさせる効力を持つ。

とくに はく時に気管からくりだされるみずからの息は

それがかすめるように嗅上皮を刺激するだけで快感を呼ぶ。

もちろん 体から出てくる息が 大気に触れる前は ほとんど無臭であることが多いが

嗅上皮をかすめる息の動きは 快感を呼ぶのである。

これによって 緊張した心身が 融けていくように柔軟になる。

これは 口で息を吐く時には訪れないカタルシス つまりは浄化をもたらす。


はく時にも 鼻呼吸の効力は まだまだ ある。


身体哲理の原則のひとつに 反対行為の完全性 というものがある。

これは 身体を健全に保つには

ひとつの行為、動作をする場合 その反対の動きを同時にすることで

ゆがみ ねじれ 左右不均一 非対称 等の不具合を回避する。

ということで たとえば

右手で球をなげれば、左手でも球を投げる。

左手で箸を使う人は 右手でも箸を使う。

山に登れば、同日に 山を下る。(登る時と下る時に使う筋肉群がちがう)

前屈すれば 後屈する。

右にねじれば 左にねじる。・・・

骨格筋肉でいえば 拮抗筋作用というものがあり、ひとつの動作は必ず、

緊張する筋肉と 弛緩する筋肉 が同時に動いて拮抗する原則がある。

したがって 身体の健全を保には 拮抗作用をたえず裏返す動作をすることで

筋肉群を まんべんなく負荷を与えることが必要なのである。

つまり 一方方向の動きのみを付与するよりも

絶えず その反対方向の動きを同時にすることが 身体保持の秘訣といえる。


この原則からいって

鼻腔内にびっしりと生えている鼻毛と鼻線毛も 両方向の流動からなびかせることで

その健全が保たれるといえる。





であるので すう時のみ鼻呼吸では、 以下の様に

鼻毛と鼻線毛は いつも同一方向に向いている状態が続く。



つまり すう時だけ 鼻毛と鼻線毛を内側になびかせるだけでは

 片手落ちであり かならす その反対方向に つまり 

はく時も 鼻毛と鼻線毛を外側になびかせる必要があり

これによって 鼻毛と鼻線毛の動きは 完成するのである。

すなわち

鼻毛と鼻線毛は 以下の図の様に

すう時もはく時も それぞれの方向になびかなければならない。




以上 るるのべてきた このような効力が

はく時も 鼻呼吸でおこなうと もたらされる。

呼吸は 眠っている時も行われているため 昼間 鼻ではく事を習熟すれば

寝ている間も 鼻ではく事ができるようになる。

それが継続されれば その集積は驚異の結果となって現れてくる。

睡眠時無呼吸症候群の人も

まず 鼻呼吸を訓練してできるようになれば 睡眠時も無呼吸回数が減ってくる。


こうして 整体においても

鼻呼吸で はく事を ことあるごとに指導しており その効果は驚異的である。


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