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 2020年2月の整体
オキシトシンという愛情ホルモン


愛情があふれるようにわきあがるホルモンとして、

オキシトシンは、ドーパミンとともに 愛と幸福のホルモンとして有名である。

これらに類似したホルモンに エンドルフィンがあるが

これらの3つのホルモンは それぞれの差異は明瞭だが

総じて幸福感をもたらし人生を肯定的に前向きにしてくれるありがたいホルモンなのだ。


このうち今月は オキシトシンと整体との密接な関係について記してみたい。





オキシトシンの特徴は

主に対人関係、生殖、分娩、母乳などの生理作用に深く関与している事で

このため ヒトの情愛、性行為、授乳の局面で多く分泌される。


オキシトシンの発見は 1906年に

脳の下垂体に 『妊娠と出産のプロセスを促進する物質』として発表される。

それは オキシトシンの語源に痕跡がとどめられ

ギリシャ語で 早く出産する(okys,tokos)という意味を連結して

ギリシャ語okytokosに由来する。

つまり

子宮筋の収縮作用を促進し、分娩を早めて、

さらに

出産後は 授乳時に射乳反射 つまり母乳を出す反射作用をひきおこす

ホルモンとして認識されたのである。


その後

1980年代に分子生物学的手法が急速発展して遺伝子分析により

オキシトシンがもつ幅広い生理機能への研究が進み

男女問わず、精神活動、情感、社会性行動への深い関与が

解明されてきたのである。

とくに

男女間、夫婦間、父母子間のキズナの形成に深く関与していりことが

明確になり ゆえに 愛情ホルモンとされるに至る。


オキシトシンの分泌は きわめてかんたん。

抱擁や握手などのスキンシップ、

当然 ハグ、接吻、性愛はいうまでもなく、

相手を見つめ合う、思い出すだけでも分泌が旺盛になる。

たわいのない会話、いっしょに飲食飲酒、カラオケ、遊ぶ、

誰かのために食事をつくる、いっしょに風呂に入る

などなど つまり他者の存在をいつくしむ行為で ドッと分泌される。

したがって

電話 メール 手紙 の手段でも同様の効果が表れる。

さらにペットなどとの交流でも同様の事態がうまれ

物に執着と愛着を持ちやすい人は

自分の好きな小物や骨頭やおもちゃを思い出すだけでオキシトシンが湧く。


では ここで オキシトシン作用の代表的な母乳のしくみを説明し

オキシトシンの現場を見てみよう。

赤ちゃんは母乳を吸いますが

これは 赤ちゃんの口の吸引力で吸っているのではなく

お母さんの乳房の筋肉の収縮で赤ちゃんの口に入るのである。

つまり お母さん側の状態で母乳が出るのである。

母乳が出る生理的現象を射乳と呼び この射乳を引き起こすのが

オキシトシン分泌である。

では どんな刺激でこのオキシトシン分泌が起こり射乳が起こるかというと

つまりお母さんの脳の中で赤ちゃんの事を思うだけで

オキシトシンが分泌される。

赤ちゃんがお腹すかせてないかな? とか

そろそろ赤ちゃんが泣く頃かなと思うだけで射乳が起こる。

すなわち母親の脳が射乳させ その介在ホルモンがオキシトシン。

このため 母親が大きなストレスをかかえたり 体調不良だったりすると

オキシトシンの分泌がうまくいかず 母乳の出が悪くなる。

産後にほとんどの母親は、

授乳する前から血中のオキシトシンの血中濃度が上がり始める。


オキシトシンの分泌の特徴は

直接的な皮膚への刺激、

情感に訴えるダイレクトな刺激、

によって昂進しやすいことにある。

このため ボディ・タッチ・ケアは オキシトシン分泌にきわめて有効な手段である。

子供へのボディ・タッチ・ケアの推進の生理学的根拠のひとつが

このオキシトシン分泌によって

子供が情感豊かな健やかな成育をみるという理論である。

このため育児の世界では オキシトシンを安らぎの物質と称している。

と ここまでくるとオキシトシンと整体の深い関連性がわかると思う。

整体はすべからく手技によって進行し手技によって終結する。

このためマッサージ、触覚、タッチ・ケア、は随所に組み込まれ

整体施術中のオキシトシン分泌は強烈になっていると思われる。

これが 整体のなざしがたい気持ちよさの実体物質のひとつと言える。


では

オキシトシンは解剖学的にどのような経路で生まれ、流動するのか?

オキシトシンは 脳の視床下部脳下垂体で産出される。

下図で参照に処いてほしい。

視床下部は 約5gの親指の指先サイズの小さな脳であるが

その役割は広大で生命維持に重大である。

食欲、性欲、体温調整、自律神経、ホルモン分泌、などなどの中枢。

脳下垂体は 視床下部の下に大豆サイズでぶら下がり

下図ではブルーの球がぶら下がったものがそれである。

脳下垂体は 視床下部の指示をうけホルモン分泌をおこなうのが役割となる。





オキシトシンの分泌の流れは2つあり、

ひとつは、

視床下部の指示で脳下垂体から分泌し血中に放出されるのがひとつ。

ふたつめは、

脳下垂体をへずに 視床下部から直接に神経の軸索を通って

標的とする細胞に到達して神経伝達物質の役割を果たしている。

すなわち

オキシトシンは ホルモンと神経伝達物質の2役をこなしていることになる。


さて

このようにオキシトシンは 人を安らかな幸福感を感じさせるホルモンのため

整体のみならず 多くの分野で このホルモンを背景にして

マッサージや エステなど 癒しの分野で理論と実践を説明する中心となっている。

すでに述べたように 育児の世界においては

ボディ・タッチ・ケアの推進理論として オキシトシンの研究が盛んである。

つまり 生まれたばかりの新生児から高齢者まですべての年齢の人が

オキシトシンの恩恵を受けることができるのである。

また

その分泌にとりたてたテクニックが必要となる訳でなく

ちょっとした愛情の行為があるだけで ふりそそぐようにあふれてくるホルモンなのである。


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