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2021年4月の整体
 舌は第三の手となる


舌もほかの臓器と同じように

 不調にならないかぎり ほとんどその存在を忘れている。



口をひらかなければ舌の動きは他人からわからず

このため 他人の舌の動きを推察するには

その発生する言語や会話の音で推察するしかない。


このように舌は暗部での活躍が運命つけられている。


だが じつのところ、

舌は驚くほど広汎な任務を帯びて大活躍し、

生命維持の文字どうりの最前線にあるのである。

さらに

舌は、手指10本よりもはるかに芸の細かい動作ができ

自在に動かせることができる。

このため 舌は

第三の手となる資格をあわせもつ不思議な器官である。



まず、

食物の体内の取入れの最初の関門が舌にある。

食物が口に入るや

舌がまずその物性を瞬時にチェックする。

温度、味、毒性、などなど。

次に咀嚼活動は 歯と舌のたくみな連動作業であり

舌は歯が噛み砕けるように口腔内の食物を自在に

歯と歯の間を移動させるのである。

また、

歯で食ベ物を噛み砕く時に、舌で食べ物を保持する。

咀嚼をくりかえすと、

粉砕された食べ物が

口唇のすきまや舌の上に落ちてくるので、

舌はそれらの食べ物を集め、

反対側の歯に食べ物を移動させ、

再度咀嚼できるように活動する。

食べ物が十分細かくなると、

舌は口腔内の食べ物を集めて咽頭に送りこむ。

咽頭から食道へ食べ物を送り込む際には、

舌によって押し出される強い筋力が必要になる。

これを嚥下
えんげ という.


このように 舌が機能しないと

食物は口腔内で咀嚼ができないばかりか

食物の毒性や味を審査できない為

毒性に対する安全上も食を味わう感性上も

はかりしれないダメージを受けるのである。




また

言語を駆使して会話をする場合も舌は大きく活動する。

この機能を構音という。

一般的には発音というが 学術的には構音といい

喉頭から口唇~鼻腔のエリアで音声に変化を与えて

言語音を形成することを指す。

この時 舌が大きな要素をもち、

舌の位置と動きが母音や子音を決定つける。





さらに

生まれてまもない乳児が母乳を飲むさいには

口蓋と舌で母親の乳頭をぴったりと包み込んで

口腔内部の圧力をマイナスにして

母乳をすすりやすくするのである。

この時に乳児の口蓋と舌に問題があると

母乳が吸えないのである。

したがって 乳児にとっては舌は生命線である。


長じるにおよんで

性愛の入り口となる接吻においては舌は

きわめて重要な役割を果たすことは

言うまでもない。

舌はひどく鋭敏な触覚器官であるため

舌の刺激で情感は一気に沸騰しやすい。


最近の舌にまつわる不快不調を訴える人の

症例の傾向でいうと 多いのが・・

活舌が悪く、しゃべりにくい 
舌の位置で睡眠障害を起こしている
舌の色が悪く 口臭が強い
唾液量が減少して 舌が動かしにくい

などである。

近ごろの傾向として こうした舌の不全に

顎関節症がともなって訴える例が多い。

また 舌は消化管の最前線にあるため

『舌は胃腸の鏡』といわれ 舌の状態でおよその

胃腸の状態をおしはかることができる。

漢方医学では

舌診
ぜっしん つまり舌で全身を診ることを重んじ

舌はひどく重要な位置を占めている。

これは 舌の粘膜が消化管と同じ由来をもち

進化的には

原腸の内胚葉から舌粘膜が分化してきたので

舌におよその消化管の状態が

忠実に反映されているとの原理からくる。




さて

今月の表題にあるように 舌が第三の手という

舌のもともとの構造的な理由がある。

それは舌の筋肉構成からくる由来である。

舌はどのような筋肉構造で動くのか?

なぜ手指より精巧に動くのか?

それは舌の筋肉構造の特殊性による。

まず

舌の筋肉は2面性に分かれ

舌そのもの自体が筋肉のかたまりである内舌筋と

舌を外側から舌自体を動かす外舌筋とで構成される。

つまり、内舌筋は舌そのものが筋肉を構成し

外舌筋は舌の外の

頭蓋骨側頭骨、下顎骨、舌骨の3つの骨格から

舌に向かって停止する筋肉群となる。

舌は まさに 

自身と外部と両方からの筋肉群で動く。

こうした舌の複合構造による由来が

舌が手指よりも精緻な動きをもたらす

要因となる訳である。


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