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 血





血液は まさに生命の中心であり

その重要性は認識しているものの 実はかなり あいまいにしかとらえていないことが多い。




血液の機能は かなり広範にわたり 生と死の極限条件から

血色がいい、血のめぐりがいい、血行がいい、という日常的に快不快を左右する現象まで

血液の働きは 様々な局面で めまぐるしい活躍をする。


まずは 整体やマッサージの現場で ひんぱんに使われる、 

『血行をよくする』
 ことの本当の意味を追求しながら

血の重要性を解析していこう。


血行をよくする とはどういうことか?


あなたが マッサージや整体などを受ける時

かならず 聞く言葉が  『血行をよくする』 という常套句である。

『血行をよくする』 ことの実感は 

難なく体験でき 事実、身体の変化が如実にあらわれるのでるので

こうした常套句も 抵抗なく いたるところでとびかう。




『血行がよくなる』 実感とは たとえば、

体じゅうがポカポカしてくる

顔色が生気を帯びてピンクに染まる

軽快感が沸き上がり 体が爽快になる

皮膚にハリがでて 時にかゆくなる

内臓が活発に動き出す

脳内がすっきりとして思考が明解になる

うっとりとして気分がよくなる

体に蓄積された疲労がとれていく感じ

 ・・・・ などなど 


『血行がよくなる』 とは 単に

血の流れのスピードが速くなるという単純な事ではない。

そもそも血液は全身を相当なスピードで全身を駆け巡っており

約1分間で 心臓の左心室を出発した血液は 動脈から静脈をめぐり

全身の血管をめぐり 再び心臓の左心室に入りこむ。

この速度は 早すぎても遅すぎてもいけなくて

適度な速度を維持することが大切であり

このことから 『血行がよくなる』 とはスピードを健全に維持する事なのである。

たとえば

心臓から勢いよく送り出された血液は 大動脈では 毎秒50cmぐらいの進行速度、

毛細血管では 毎秒0.03cmぐらいのかなり緩慢な進行速度。

大静脈では 毎秒15cmぐらいの進行速度。

こうした ある程度の基準がある。


このように 『血行がよくなる』 とは 

血の流れが単純にスピードアップする事とは ちがうことがわかると思う。


そもそも 血の流れは 複雑な要素で成り立っているのであり

血液の働きが広範囲にあるように 血の流体の良し悪しも様々な要素で決定される。


まず 血の成分である。

血液成分の主は 赤血球と血漿であり これらの相互作用が血液の特異な流動性状を生む。


また血管は

ヒトひとりの身体のすべての走行距離は 何万キロメートルともいわれ

気の遠くなるような長さに特徴を持ち

これによって 血管そのものの劣化、変形、老化、悪貨などが

血行を大きく左右する要素となる。


血流のテンポとリズムは きわめて独特な音楽を持っている。

流量が一定の流れではなく、脈を打つ流れ、流量が周期的に変化する流れであり

この血流の独自な流れは 脈流と呼ばれる。 

心臓の鼓動に始まり 動脈 静脈 毛細血管 と 3つの血管の独自な流れがあり

血液成分が独自な性格を持つ集合体のため

血流は特異なテンポとリズムを奏でることになる。


『血行をよくする』
 とは こうした血流そのもののテンポとリズムを

快活に あるいは 穏やかに あるいは 嬉々とした状態に保持する事でもある。

こうした文学的修辞を あえてするのも

血行 は心理的、心情的な影響を色濃く反映するものであり

感情の起伏や、ストレスの襲来、などのより

瞬間的な変動をもたらしやすい。


ここで基本的な血液循環のルートを見てみよう。

ルートは3つある。

赤のラインが動脈、青のラインが静脈、緑のラインを門脈 と呼ぶ。

さらに 違う概念で血液循環をとらえた場合、 つまり

心臓を中心にした循環形態、 肺を中心とした循環形態

の2つに分かれる。



さらに 血管を細かく分けると

毛細胞 と 毛細血管が存在しおり 毛細血管で動脈と静脈がつながれる。

下図が 動脈⇒細動脈⇒毛細血管⇒細静脈⇒静脈 のイメージ図。




『血行をよくする』 そのひとつは こうした血管流路が とどこおりなく進行することをいう。

では 血管流路が とどこおりなく進行するために何が必要要素となるのか?

それを集約すると 以下の様になる。

呼吸 呼吸による酸素と二酸化炭素の交換の健全
細胞レベルでの酸素を使ったエネルギィ交換の進行 
心臓 心臓の機能の健全化
血圧の健全化
肺の機能の健全化
血管 血管の質の健全化
血液 血液の成分の比率 
血液成分の粘度
血液運行の速度 
臓器 10 脳内状態の健全、及び 頭部周囲の筋肉柔軟性
11 肝臓・腎臓・腸の健全、及び 周囲の筋肉柔軟性
12 下肢骨格筋の健全
精神 13 精神の安定


血液の最も大きな役割は 酸素と二酸化炭素の運搬であり

このため 呼吸による酸素の取入れと二酸化炭素の排出が質的低下をもたらすと

血液流動にも大きな影響をもたらす。

このため 『血行をよくする』 には呼吸が出発点となる。

呼吸は 大きく分けると2種類ある。

ひとつは いわゆる肺呼吸、 今ひとつは 細胞呼吸。

肺呼吸とは 通常の肺で酸素と二酸化炭素を出し入れすることで、

細胞呼吸とは 取り入れられた酸素が血液で運行され 細胞レベルで

糖質や脂質と酸素が ATPという物質に変換される代謝呼吸を指す。

この細胞レベルでの代謝呼吸が順調にいかないと

次々と運ばれる酸素は血液の中で停滞してしまう。


血液が血管の中を流れる原動力になっているのは

心臓のポンプ機能による血液の拍出である。

このため 心臓の機能の健全は これが損なわれるとたちまち血行に影響する。

血圧とは つまりは心臓のこの拍出のパワー指数であるので

血圧の不安定も 血行に多いに影響する。


血管は 特にその内壁は 弾性と可動性に富み 血行に大きく左右する。

動脈も静脈も

外膜と中膜におおわれ 平滑筋繊維を経て内膜に至り

内皮細胞が血管の内部表層となる。




血行は、血液そのものに大きく影響される。

なぜかというと血液成分の数や形状や比率は変動性が激しく

これらが刻々と変貌しながら流動しており

血液成分の比率、その形状、流動速度、老化、変質、 等々の要因が

血行を 大きく左右させる。

また 血流は 血管の中で単純な流動形状ではなく

 層をなして 単層、2層、多層、と変化している。

このため 血流速度は 

血管の中心付近で最速となり、血管壁付近で最も遅くなる。


脳内では 多くの血液が寸断されることなく消費されており

脳内あるいは頭部周囲の健全が 全身性の血行不良をもたらすことがある。


また 肝臓・腎臓・腸は

血液の代謝、解毒、浄化、等の中心となる臓器であるため

これらの臓器の機能低下や障害があると

血行に大きな打撃をもたらす。


下肢骨格筋は とくに静脈の推進力となるパワーの源となるのであり

下肢骨格筋の脆弱と硬直は 静脈の推進をいちじるし妨げるのである。


精神や心理の不安定は 血行の乱行を生む大きな要素となる。

精神と心理の安定は 血行の安定と健全をもたらすのである。


血液とは 何なのか?



次に 血液の役割をまづ 列挙しよう。


1  酸素と二酸化炭素の運搬


口から吸いこんだ酸素が肺に入ると 肺で酸素が血液に入りこむ。

この時 血液の中の赤血球内のヘモグロビンが酸素と結合して

身体全体をめぐる血液循環に乗って 各組織に運ばれる。

各組織では 酸素と栄養素が結合してATPという終着エネルギィ形態となる。

ATPとは、比喩的にいうと 

体内の中の細胞のレベルで エネルギィの通貨のような役割をしているもので

口呼吸からはじまり 酸素が血液の赤血球からATPに至る過程で

細胞が生命を得るのである。

その後 ATPが生成されると 同時に二酸化炭素が生成され

二酸化炭素は体にとって害となるので、

今度は血液により二酸化炭素が肺に運ばれて呼吸により体外に排出される。

この一連の工程の中で 血液は運搬の機能をつかさどる。


 栄養の運搬


エネルギィ源となる栄養 (タンパク質、糖、脂、ミネラル、) が 血漿の中で運搬される。


 ホルモンの運搬


内分泌腺から分泌されたホルモンは 血液で運搬され細胞に運搬される。

内分泌腺の代表的なのが

脳下垂体 甲状腺 副腎皮質 松果体 すい臓

であり 脳の指令により これらの内分泌腺でホルモンが形成されると

そのホルモンが血液中にはいり血管を通じて 

その特定のホルモンを受動できるチャンネルをもった

細胞に運ばれホルモンの働きが発揮されるのである。


 代謝後の老廃物の運搬


組織細胞で代謝が行われた後に産出する老廃物は

肺 腎臓 肝臓 皮膚 大腸 で排出される。

この時 血液内にこれらの老廃物が入り 所定のこれらの臓器に運搬される。


 体温調整


体温を恒常的に一定に保持する機能は 血液にあり 

外気が温度が高い時には 皮膚に近い細い血管を大きく広げて

血流量を多くして 体内にこもる熱を効率的に体外に逃がす。

こうして 外気の変化に応じて 体表の毛細血管を拡張したり収縮したりして

体温調整がされている


 血圧調整


血管と心臓は血圧を以下のように調整している

体外の気温が下がると 体内熱が奪われないように血管は収縮する。

すると 収縮した血管に血流を維持するために心臓は 圧力を高くして血流を維持しようとし

結果的に血圧は高くなる。

また 体外の気温が上がれば 体内の熱を放出するため血管は拡張して

放熱エネルギィを多くする。

このため 心臓からの圧力は低くなるのである。



このように 血液は運搬を主なる仕事としているのだが

その運搬する内容物が生存のために不可欠であるため

血液の循環が生死を分け、 かつ 健康を維持するための関門となっている。


脳と血液の密接度


その血液の仕事が劇的にあらわれるのが脳である。


血液は それが止まれば まずやられるのが脳である。

脳は 血液には最も弱く ヤワなのであり

血液が運搬する酸素とブドウ糖が絶たれると

約20秒前後で脳の神経細胞は酸欠になり、

約5分前後で脳は栄養欠乏となり 脳内の神経細胞が死んでゆくのである。

このため

血液が止まれば まず脳から死のカウントダウが始まる。

 脳以外の他の臓器も 血液がとどこおれば いずれ死を迎えるが

脳のような短時間で神経細胞がいかれることはない。

それは エネルギィ源が体内備蓄から供給されるシステムがあるからで

筋肉組織はこうした備蓄エネルギィにより 血液遮断後も5時間位は維持できる。


いずれにしろ

脳がこんなにも血の欠乏に脆弱なのも

脳のすべてのエネルギィ源を血液中の酸素とブドウ糖に頼り

その上 脳にはこれらを備蓄する機能を持たないメカニズムのため

絶え間なく流れ寄る血液が必要で

血液中の酸素とブドウ糖の遮断が 分単位で脳神経細胞の死をもたらすのである。


血液の成分


血液の成分は 以下の様に分かれる。 






すでに述べたように 血液は、

エネルギィ源である 酸素をはこびATPを形成して 代謝後に二酸化炭素を運ぶ。

また 栄養素とホルモンを運搬し

老廃物を臓器に運搬する。

さらに 体温と血圧の調整をする。


血のめぐり、血行をよくする とは

こうした一連の生命力を維持する血液の流れに活力を与える。


血液の最も大きな役割は 赤血球による酸素の運搬である。

その運搬つまり循環の駆動力の最大は心臓の収縮による血圧である。

このため血圧は 血液循環の優劣を判断する基準になる。

血液循環の駆動力は心臓以外に 血管をとりまく全身の骨格筋の収縮もあげられる。

このため 骨格筋がたっぷりあり その収縮力を発揮できる柔軟性が確保されていると

血行は健全を保つ。


さらに 血管内の血液の流動性は

血管内の血液自身の流動挙動性の能力で左右される。

それは 主に血液の粘度で表示される。

血液成分は 55%の血漿と 40%の赤血球がほとんどを占めるので

血液の粘度は 血漿と赤血球の流動挙動性に依存される。


赤血球は 直径が8μmの両面が凹の円盤型の細胞であり

その表面積は凹型になっている由縁で

表面積が大きいのが特色であり

これが 酸素輸送の効率性を高めている特色となっている。

骨髄で新たに生まれたばかりの若い赤血球は 直径も大きく

凹中くぼみの状態も鮮明でありよく維持されている。

ところが 120日の命をもつ赤血球が老化するにつれて 凹中くぼみはあまくなり

厚みを増し 球形に近似してくる。

このため 赤血球の流動性は低下する。


赤血球の膜は

脂質とタンパク質のモザイク構造となっており

それが 外力によって自在に変形できる特性を赤血球に与えている。


血液の粘度は

 心臓と血管の疾患に関しては 危険度を上昇させる重大な因子となる。

動脈系では 血液粘度が上昇すれば

組織へいきわたらせる血液量を維持するために 血圧は上昇する。

静脈系では 血流量が減少すると

血液粘度が上昇して ますます 血流の減少が加速する。

こうした事態が進行すると致死的な状況となる。


血液の粘度については 以下のようなことがわかっている。

1、成人男性と成人女性を比較すると 成人男性の血液粘度が高い。

これは 成人男性が赤血球の数が多いためとされる。

ただし 閉経後の女性は 血液粘度が高くなる傾向がある。 

、喫煙者は喫煙の進行にともない 血液粘度が高くなる。

3、血圧の上昇が血液粘度の上昇を生む。

4、血漿中のコレステロールの増加は 血液粘度の増加を生む。


血と整体


血と整体は 切っても切れない独自な関係にある。


ひとえに それは血が 生命の必需である酸素と栄養素を運搬していることにある。

さらに 不都合な異物や細菌と戦い 免疫機能を発揮して

身体を維持し恒常性を保持するために血が休みなく奮闘しているからであり

身体のすみずみに駆けずり回る血は 流動で全体システムを維持するのである。


こうして 血は

自身の身体に宿る潜在力や免疫力や自己修復システムを最大限に活用して

不快・不調・痛みを解消して 身体改造をねらう 整体にとって

最高の標的であると同時に パートナーなのだ。


傷ついた部位を修復し、狂った内分泌やホルモンを調整し、

停留した老廃物を流しだし、機能低下した部位に酸素とエネルギィを注入し

思いどうりにならない身体を蘇生させる原動力こそ血である。


『血行をよくする』とは つまりは 血で身体を蘇生するための駆動に拍車をかけること。

とはいっても 血はその微妙なテンポとリズム、めまぐるし変調により

適正な血行をとらえることはむつかしい。


ここで

前述した 血行をよくする13の要素表を今一度 かかげよう。

呼吸 呼吸による酸素と二酸化炭素の交換の健全
細胞レベルでの酸素を使ったエネルギィ交換の進行 
心臓 心臓の機能の健全化
血圧の健全化
肺の機能の健全化
血管 血管の質の健全化
血液 血液の成分の比率 
血液成分の粘度
血液運行の速度 
臓器 10 脳内状態の健全、及び 頭部周囲の筋肉柔軟性
11 肝臓・腎臓・腸の健全、及び 周囲の筋肉柔軟性
12 下肢骨格筋の健全
精神 13 精神の安定


血は この表のような要素で成り立ちながら 血行が決定されていく。


血の流動性は 複雑な要因で決定されるために

『血行をよくする』 ことは簡単なことの様に見えて 実は

複雑系の処理のテクニックが必要とされるきわめて難度の高い施術なのである。


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