2012年12月の整体


 

今年の寒さはいつになく身にしみるようで
このところきびしい寒さで膝などの関節に痛みがでる人が続出している
もともと膝などの調子の悪い人は 寒さで一段と悪化しやすい
そんな時は 風呂に入り膝をじっくりあたためてベッドにはいれば
熟睡してあっという間に好転してしまうこともあるが 逆に寝すぎてさらに劣化することもある

なぜ寝すぎると悪くなることがあるのか?
それは 熟睡によって体温がさがってしまい 結果、
もともと血行の悪い人や 膝の周りの慢性的なコリの強い人が 膝も冷たくなり痛みが誘発されるのである

もちろん 睡眠がすべて体温を下げるわけではない
睡眠も多様であるので体温をさげない眠りもあるのである

そこで今月は眠りについて考えてみよう

窓外の雪、
暖炉のかたわらで その炎のゆらめく色をみながら ときおりのマキのはじける音をきいていると
しだいにまどろんでしまう そんなうたた寝は冬の醍醐味である
では こうした眠りも体温も下げるのか?
そう、不思議なことに
 こうした暖炉のかたわらのつかの間の眠りも
体のメカニズムから分析すると血流量を抑制し 結局 体温を下げてしまう
なぜなら こうした状態の眠りを 
ノンレム睡眠と称し
眠りは安らかで深いのだが 大脳を沈静化するとともに体温も同時にさげる
それでも暖炉の火があるおかげで
体温低下でも体自体は外からの放射熱でこの上なく暖かく快適である
こうしたシュチエーションでは 目覚めた時の脳の新鮮感は最高である
それこそが
ノンレム睡眠の特徴である大脳の沈静が実現したからである

では その逆にそんなに体温を下げない眠りもあるのか?
あるのです
それが
レム睡眠とよばれるもので これは骨格筋肉の緊張を解いて身体をマヒ状態し体を休ませる眠りである
そのかわり大脳は活性化させる性格をもっている

ここで
そもそも レム睡眠とは何なのか?
急速眼球運動 つまりこれを
レムというが、これをともなう睡眠という意味である。
つまり 体はぐったりしているのに 眼球運動 つまり脳は覚醒に近い状態になっていて 夢を見ていることが多い眠りである。
ノンレム睡眠とは レムでない睡眠という意味で脳が活性していない睡眠という意味である。


したがって この 
ノンレム睡眠・ レム睡眠 を分別する現在の睡眠学に準じれば
関節などを冷気から守り 骨格や筋肉にたいして休息をうながす
レム睡眠をしっかりとるとよいことになる
ただし ノンレム睡眠・ レム睡眠も相互に補完的であるので
そもそも ノンレム睡眠・ レム睡眠を分けるというこういう分別そのものが
邪道であるのかもしれない

かように眠りは少し複雑である
少し複雑であるが ノンレム睡眠・ レム睡眠
 のちがいを体得し 眠りのコントロールが自在になると
身体のコントロールもしやすくなり
さらには脳のコントロールを意識的にできるスタートラインに立つことができる


実は 整体も このノンレム睡眠・ レム睡眠
の理論を援用し
施術の中で一瞬の眠りを与えながら 筋肉や脳に働きかける技法がある
施術中にあえて 極めて短時間の眠りを与え
数分で眠りの深淵に達するような感覚を与え
筋肉弛緩をめざすとともに脳に深い休息を与えるのである

体全体が岩のように硬く 押しても引いてもどうにもならない患者がときにいるが
こんなときは むやみやたらとからだをひねくりまわすより
一瞬の睡眠をあたえるのが最も効果的な時がある
瞬時の睡眠で 体のこわばりが 魔術のように解ける瞬間がある
その間隙をぬって 身体のあるポイントに力を差し込むと
全身が溶解するように弛緩する
これは
レム睡眠を利用した施術である 

 現在の睡眠学によれば 
通常は睡眠の単位が セットで一単位 1.5時間で構成され
最初の2単位つまり寝入りばなの3時間の間に
深い
ノンレム睡眠 (熟睡) がまとまって出現する
以後は 浅い
ノンレム睡眠レム睡眠のり組み合わせとなり そして各単位の終了後とに目覚めやすくなり ついに覚醒となる。
この理論からすると
熟睡は つまりは寝入りばなの3時間であり この3時間の寝入りばなが成功すると眠りの強い満足感がえられる。
よくドラマの活劇などで 「寝入りばなを襲う」とあるのは まさに相手が一番の深い眠りのタイミングをねらうものなのであり
これもよく睡眠学を踏襲している

さて 整体であるが そのテクニックは つまり 
本来寝入り3時間のノンレム睡眠から始まり その後の繰り返される数回のノンレム睡眠レム睡眠を経て
覚醒までの時間を数分で経験できる技法である
実際に患者は このつかの間の眠りで 筋肉弛緩と脳の休息を体験できる

なぜ そんなことが可能かというと
もともと 睡眠の調節は脳幹 つまり中脳や間脳でおこなわれており
ここで 

@ 神経ニューロンが放出したり受容したりする睡眠にかかわる神経伝達物質の調整をおこなう
A 脳脊髄液を介して液性の
睡眠物質を出現させ覚醒を抑制し 睡眠を誘発或いは維持させる 

ことにより
睡眠と覚醒をコントロールしているのであるが
この仕組みを利用し
中脳と間脳に適度な刺激を付与することで
神経伝達物質睡眠物質
の活性化をはかる
これが 整体による極短睡眠の技法の理論である

整体にはいけない時には せめて
炉辺あるいは ストーブのかたわらでのまどろみの後 すっきりした心身で
屋外で降りしきる雪に つかのま身をさらすことなどすることを
されてはいかがでしょうか