いたみ



いたみは
いたみの渦中にあるヒトにとってみれば
ひたすら いたみからまぬがれたいばかりであるが
それを治す立場からみれば きわめて複雑系である



ここでいう複雑系とは
いたみが 身体心の相互に関連する複数の要因が合わさって発症にいたるもので
複数の個々の要因
及び
それが 全体として関連するメカニズムが解明できないと
いたみが一掃されない ことをいう
もちろん
一瞬の整体が急所を いちげきでうがち 
あっという間にいたみが終結することも多いが
治療時間が一瞬であったとしても
痛みが複雑系であることには変わりない




慢性的にしろ 急性のそれにしろ
いたみは複雑系をまぬがれない
とうぜん
急性の場合は そうじていたみの終息までに要する時間は短いが
時には 突然の強烈ないたみは
いたみの発生から その終結にいたるまでが切迫しており
その切迫が いたみを変容させて
意外な軌跡を描くこともある
いたみが収束する前に 潜在していた病巣が勢いを得て
新たないたみとなって踊り出てくるのである
そうした時 はなはだしくは連鎖して次々と いたみが勃発することもある
こうした連鎖する急性のいたみは
当人にとって恐怖である
それまで あらわれなかった体の変調が
一気に痛みとなって噴出する

慢性のいたみは
うち続くいたみで ヒトを思索的にするが
痛みの根源的な病巣とは別に
その深い思索の習慣そのものが 
逆に
痛みを定着させてしまう事もある

こうして
いたみは ひとそれぞれの独自ないたみとなってあらわれる

整体のカバーするいたみは広い
まず
典型的ないわゆるいたみは以下;

頭痛
顔面痛
肩痛
首痛
胸痛
腕痛
背中痛
腰痛
股関節痛
膝痛
足首痛
足裏痛


また次のような 新しいタイプのいたみも整体の対象である

全身痛
心身ストレスによる身体痛

不定愁訴の鋭い痛み
テクノストレス症候群による疼痛

慢性疲労症候群による疼痛

では
その複雑系を解きほぐす手立てとして
いたみの分類の仕方から記してみよう
まず
原因 場所 表現 
身体反応

この4つの概念で分別してみる

いたみを原因から集約すると 大きく次のように3つに分けられる
組織の損傷
中枢神経、末梢神経の機能の異常
心因性つまり精神的なストレス

つぎに いたみの場所から集約すると 次の5つに分けられる
皮膚・粘膜 
骨格・筋肉
内臓・臓器
脳・脊髄
特定不能

つぎに
いたみの 表現 と 身体反応 を列挙すると
下表のごとく

原因 場所 表現 身体反応 
 
組織の損傷
中枢神経、末梢神経の機能の異常
心因性つまり精神的なストレス
皮膚・粘膜 
骨格・筋肉
内臓・臓器
脳・脊髄
特定不能
 うずく
 ズキズキ
 焼ける
 キリで刺される
 電気が走る
 切り裂かれる
 押しつぶされる
 ねじられる
 かみ合わせが悪い
 ヒリヒリ
 引っ張られる
 割れるような
 つらぬくような
 しめつけられる
 ハンマーでたたかれる様
 凍るような
 ドクドク
 四方へ拡散する
 重く にぶい
 ゆがみ
 冷や汗
 ふるえ
 のどのかわき
 落ち着きがない
 発熱
 不安
 動揺
 失語
 どもる
 歩行不能
 睡眠障害
 無気力
 うつろ
 怒り
 失望
 なげやり
 


いたみの
表現
どのようないたみかを判断する大きな材料になるが
表現されたいたみは
その人の言語感覚や表現レベルあるいは知的性格にも左右され
その分析は慎重を要するところである

いたみの根源と現状を最も鮮烈に提示するのが
表現である

また身体反応
治療するものがいたみを分析判断する時に
膨大な情報を与える

したがって
いたみの渦中にいるひとは
つらいであろうが 言語表現と身体反応を
克明に伝えるのが
複雑系と戦う上でかかせない